ドイツにデザイン留学中のかしいです!
8年勤めていたIT業界を辞めて、KISD(Köln International School of Design)のIntegrated Design科Bachelor課程(州立大学であるケルン応用科学大学 TH Kölnのデザイン科)で1年勉強してきました。
今回、ブレーメン芸術大学(Hochschule für Künste Bremen)のIntegriertes Design科に転籍することにしました。
この記事では、KISDに入学して1年経って感じたこと、なぜ転籍すると決めたのかを正直に書いてみます。
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- なぜドイツの美大に留学することにしたのか
- この1年でKISDで学んだこと
- 1年勉強してみての不満
- 1年ドイツで暮らしてみた感想
- 結論:ブレーメン芸術大学に転籍することにしました
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なぜドイツの美大に留学することにしたのか
なぜIT業界を辞めてデザイン学科に入学することにしたのかを書いた記事はこちら。
なぜドイツを留学先に選んだのかの記事はこちら。
この1年でKISDで学んだこと
自分はグラフィックデザインに興味があるので、なるべく関連した授業を取りました。
- Poster Competition
ポスターコンテストにポスターを3点つくって応募するプロジェクト - Stage construction and event design
ケルン伝統音楽祭のためにステージデザインをするプロジェクト - Erklärfilme
何かを説明する映像をつくるプロジェクト - Poster Plakate Affiche
ポスターの歴史を生徒同士でプレゼンするセミナー - Identities of cities, regions and nations
アイデンティティデザインについて生徒同士でプレゼンするセミナー - Interactive Systems (Fundamentals)
プログラミングの基礎とProcessingを学ぶ - Interactive Systems (Application)
Arduinoを学ぶ - InDesign/Typography
InDeignの基礎を学ぶ - Desktop video for international students
Adobe Premier ProとAfter Effectsの基礎を学ぶ - Quick and Dirty
初心者の新入生向けの全般デザインツール入門コース - Skizze und Zeichnung
プロダクトデザインのスケッチ画の描き方を学ぶ - Research AG: ZZZine
KISDでの研究をまとめるためのZINEとWEBサイトをつくるボランティアグループ
InDesign、After Effects、IllustratorなどAdobe系のソフトの基礎的な使い方やArduinoを学べたのはよかったなと思います。
(今まで何度も独学しようとして、結局時間がなくてできていなかったため)
ケルン伝統音楽祭のステージデザインができたのもケルンならではでよかったです。
ただ、あまり自分のアイデアは採用されなかったので、スキルが培われたというよりは単にいい思い出という印象です。
また、ドイツ語コースも無料だったので、受講してB2レベルを取得できたのも助かりました!
1年勉強してみての不満
不満1:交換留学生が優遇されすぎていて取りたい授業が取れない
KISDは留学生が4割で、「いろんな国の人と交流できるのっていいじゃん!」と最初は考えてました。
しかし、フタを開けてみると多いのは交換留学生で、フルタイムの留学生(Bachelor課程を修了するために外国から入学した生徒)はあまりいませんでした。
これ自体は別にいいのですが、やたら交換留学生だけが優遇されていてフルタイムの留学生(International degree-seeking student)はほぼ放置なんです。
- 外国人向けの情報提供は交換留学生だけ
(フルタイムの学生にも必要な情報なのに) - 交流イベントが頻繁にあるのも交換留学生だけ
(フルタイムのドイツ人学生、留学生は参加できない、なんで?) - 交換留学生は基本好きな授業を取れる
(結果、フルタイムの学生は定員からあぶれて取りたい授業が取れない) - 交換留学生は優先的に学生寮に入れる
フルタイムの学生はドイツ人同士でつるんでるし、交換留学生は交換留学生どうしでつるんでいるしで、最初は友達を作るのに苦労しました。
全体の生徒数に対して授業の定員が少ないため、交換留学生と上級生が優遇されて取りたい授業が全然取れず。
正直デザイン科で学位や成績はあまり重要ではないので、自分が学びたい分野でない授業を単位のためだけに取らなきゃいけないのはかなりキツかったです。
しかも、これらの単位は転籍するときに単位交換できず完全に時間の無駄になりました…涙
不満2:デザインに関係ない授業を取らなければいけない
AG(Arbeit Gemeinschaft、ワーキンググループ)という授業があるのですが、
これは実質学校運営のボランティアをすることで単位がもらえるというものでした。
1階のカフェで学期中に週10時間働くと2単位もらえるとか。
論文誌の制作のために著者にメール送っただけで2単位もらえるとか。
正直デザインとどう関係してるのかわかりませんでした。
最初の項目と同じく、わざわざデザインを学ぶために大学に入り直してるのに、デザインと関係ない授業の単位のために時間を取られるのはかなりストレスでした。
不満3:チームプロジェクトが多いのに責任感がない学生が多い
わたしが一度社会人を経験してしまっているせいもあるのかもしれません。
チームプロジェクトで当然のように割り振られたタスクをやってこないメンバーがいるとさすがにイライラしました。
学生なんだから学生気分でいいのかもしれませんが、学期中に旅行で平気でいないとか、遊んでて連絡が全然取れないとかは本当に困りました。
学生の質が低い!!(TOT)
不満4:個人で制作できない
中間制作と卒業制作は1人でもできるのですが、それ以外のプロジェクトは仲間を3人集めないと学期中に取り組めません。
個人で作品制作を進めたい自分にとって、この制度は合いませんでした。
デザインの勉強がしたくて留学したはずなのに、なぜまず友達を作ることに努力しなければならないのか?????
不満5:教授の指導方法があまり良くない(合わない)
ポスターを制作する授業をとったのですが、締切2週間前になっても教授からアイデアにOKが出ず。
最後の1週間で突貫的に仕上げたため、最終クオリティはあまり良いものになりませんでした。
良いアイデアが出るまでブレストするのはいいのですが、もう少し早く制作に着手させてもらえないと何もできないだろ、と教授の指導方法に疑問を持ちました。
逆に映像制作の授業では何を作っても「いいと思う」しか言われず、「え、ここで学んでる意味ある?」という状況に…。
フィードバックがないのであれば、学校に通う意味ないんじゃと思ってしまいました。
不満6:展示スペース・展示の機会が少ない
ケルンの街中にあるので、校舎が狭く自由に展示できるスペースがほぼありません。
金曜日にプロジェクトの成果発表があるのですが、カフェスペースに展示するので午前中だけ展示してすぐに撤収せねばならず…。
「もっと1週間くらい展示して多くの人に見てもらわないのか?」と疑問に思いました。
デザイナー養成学校なので展示よりもプレゼンに重きが置かれており、作品の展示方法を学べる機会が少ないのは残念でした。
1年ドイツで暮らしてみた感想
社会人学生の大変さ1:10代の頃と比べて如実に感じる体力の衰え
18~22歳の頃は、課題がヤバくなったらレッドブルを飲んで徹夜して仕上げたりしても平気でした。
30代の今、徹夜は不可能。
というか自分の場合、会社員時代に過労で倒れてから体力が激減してしまい、
できるのは1日1タスクのみ、2日稼働したら2日休みが必要レベルに体力がないです。
10〜20代の同級生と同じペースで生活していたら死ぬので、より余裕を持って制作していかないといけないと学びました。
社会人学生の大変さ2:貯金が目減りしてくストレス
今回の留学は親の支援は受けず、奨学金ももらわず(そもそも30代だとほぼ応募できる奨学金がない)、自分の会社員時代の貯金でやりくりしています。
最初は「ドイツでバイトすれば大丈夫」と思っていたのですが、
- ありえない円安(1ユーロ150〜170円)
→日本円からユーロに変えたときに大幅に目減り - 通常3ヶ月で発行される滞在許可が9ヶ月かかり、その間バイトできず
→日本からリモートで仕事を請け負っても、円安なので報酬が安すぎて割に合わない - 一眼レフカメラ、デジタルカメラ、iPad Proなどデザインの勉強で使っていた高価な電化製品が入っていたリュックを丸ごと盗まれて60万円の損害が出る。(保険なし)
→円安のため、日本で買ったときのほぼ2倍の値段でiPad Proとデジタルカメラを買い直す(一眼レフは盗まれてから1年経ったけど未だに高くて買い直せてない…)
など計算外なことが続出し、思ったよりも出費がかかってしまいました。
学食のお昼ご飯3.3ユーロですら高いと感じ、自宅からコーンフレークとヨーグルトとバナナを持参している毎日です…。
2020年末の時点でドイツ留学を計画していたので、もっと前から毎月ユーロに積み立てておけばよかったと後悔しました…😭
今はようやく家賃の安い家を見つけることができ、バイトも始めたのでお財布事情は安定してきました。
ドイツ留学の大変さ1:住環境を整えるだけで大変
正直、KISDで勉強していた1年は家のトラブルが多すぎてまともに勉強に集中できませんでした。
最初に住んだ家のシャワーが2ヶ月壊れっぱなしで、大家に「早く直してくれ」と直談判したら逆ギレされて1週間で次の家を探して出てくことになったり…。
次に住んだ家が違法転貸で郵便受けに自分の名前を貼らせてもらえず、
そのせいで外国人局への招待状が受け取れず滞在許可を受け取るのが大幅に遅れたり…。
今思うと、最初の家探しを妥協しなければよかったです。
結論:ブレーメン芸術大学に転籍することにしました
ケルンインターナショナルデザインスクール KISDを退学して、ブレーメン芸術大学 Hochschule für Künste Bremenに転入することにしました。
- イラストレーション専攻がある
- 個人で制作できる
- 校舎が広くて展示スペースが豊富
- 授業がドイツ語なので、交換留学生が少なめでKISDより授業が取りやすい
- 美大なので個人でアーティストとして活動してる友人を多く持てる
などが理由です。
ブレーメンに行ったからといって人生がバラ色になるかはわからないです。
どうせ、ドイツ語がわからなくてまたひいひい言ってると思います。
でも、現状に不満があるときに今より悪くなることを恐れて行動しないのはもったいない!
今までの人生で2回会社を自主退職してますが、どちらも「人生で最良の決断だった」と思っています。
後悔したことは一度もないです。
ドイツに来てからも、日本にいたらありえないトラブルばかり起こってますが、それでも「ドイツに来なければよかった」とは一切思ってません。
一度社会人になった方も、学びたいことがあればぜひ一歩を踏み出してみてください!
お知らせ:ドイツ生活のエッセイ漫画をKindleで公開しています!
Kindle Unlimited会員であれば無料で読めるので、ドイツ生活について興味がある方はよければチェックしてみてください :)